赤坂在住の夫婦と娘と赤ちゃんによる日記と地元情報。 食事、映画、読書にアート、何でもありのブログです。 第二子誕生しました!


by yesquire
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

タグ:ラテンアメリカ文学 ( 7 ) タグの人気記事

ガルシア=マルケスの自伝『生きて、語り伝える』は幻想的かつ現実的な彼の小説にも似て大変興味をそそる半生記。 日本の文学大家と同じように進学しても勉強せず将来のベストセラー作家を夢みて中途半端な生活を送り、様々な経験をして小説家としての肉付きを増やしていく過程は(当時のコロンビア情勢が不勉強でも)面白く、特に母親を中心としたファミリーの奇人や伝説は名作の背景が見え隠れして楽しいノンフィクションとなっています。
f0096206_22455480.jpg
新聞記者としてヨーロッパへ渡る直前で今回は終了しますが、その経験を生かしたドキュメンタリー風の半生の語りは見事としか言いようがなく、自伝をこれほど読み応えある作品に仕上げたマルケスの技量には大きく感心。 執筆ばかりと思えばちゃっかり女性も(危機一髪の時もありますが)モノにし、意外ですが中南米の音楽に造詣の深い面を見せたり、人生の中で過ぎ去って行った人の名前や表情などを詳細に記憶している部分には驚かされます。 政変が起きたコロンビアでの「この世でいちばんいい職業」で「高く評価しているルポルタージュ」のお手本のような緊張感のあるパートや、父親の期待を裏切りその事実を現実的かつ芯の強い母親と分かち合う両親との関係や大勢の兄妹を振り返るノスタルジックな文章などマルケスの様々な一面が凝縮され続編が大変待ち遠しい一冊でした。
[PR]
by yesquire | 2010-03-11 22:46 | book
最近読んだ南米の作家達の秀作はすべてノンフィクションばかりです。 『楽園への道』は理想を追及し自らを犠牲にして労働者運動を行うフローラと、その孫であり芸術を異国に求めてさまようゴーギャンの物語。
f0096206_154524.jpg
労働者を団結させようと孤軍奮闘している祖母の姿は女性への偏見や労働組織に対する無知と保守的な信仰が渦巻く1850年代のフランスにおいて全く絶望的で無謀に描かれます。 同じように安定と地位と家族を捨て南の島に移住した孫の乱れた生活と性病に侵された身体での芸術活動も自暴自棄かつ絶望的に語られます。祖母は若気の至りで嫁いだ後悔と夫からの逃亡、対比される孫は親友ゴッホへの裏切りと自殺に対する責任に行く先で付きまとわられ苦悩します。

題材に事欠かないからか特異な地理と歴史が理由か分かりませんが、南米の作家にはちょっと変った家族や一族など「族」の歴史を書く非凡な才能が感じられます。 フランスに立ち向かう祖母とフランスを捨てる孫の悲運を語った作品は特にリョサらしい詳細な調査に基づいた現実的な夢物語に仕上がっていました。 

リョサは小説を書くに前に緻密なリサーチを行い特にペルーの歴史や社会を目にするうちに自ら大統領となって現状を変えようと思い立ったことがあります。 キューバ革命に感銘し実際に住んでいましたがプラハの春を契機に共産主義と決別します。 裏切りや失望感に支配された作品は居並ぶ南米の大御所でもリョサの得意分野なのだと感じました。
[PR]
by yesquire | 2008-02-10 16:03 | book
娘を持ったのでイザベル・アジェンデの『パウラ、水泡(みなわ)なすもろき命』を読みました。 作者の娘がスペインで病に倒れ、死に至るまで看病した間に書き綴ったノンフィクションです。
f0096206_21434360.jpg
マドリッドでの治療や病状など行き場のない現実と合わせて、聞こえているか分からない病床の娘に自分の半生とアジェンデ一家の話を聞かせる母親の切ない語り。 苦悩、責任、希望と何といっても愛がストレートに感じられる伝記でもあります。

チリの首班を輩出したアジェンデ家の歴史、自分の母親やそれだけで小説になりそうな作者の人生を病室でパウラに語る決意をしたのは、彼女が目覚めた時に途方にくれないようにとの思いです。 特にイザベル・アジェンデの結婚から出産、離別と「精霊達の家」でベストセラー作家になるまでの過程は旅や異国での生活がおとぎ話のように描かれ面白かったです。

ラテンアメリカ作家の特徴である最初から結末やドラマの大筋を読ませて読者をグイグイ引きこむ手法は本書でも有効で、女性の視点で語られるだけに他の大御所より描写が美しく(特に出産の場面など)、より優しく感じました。

こんな人生を歩んできたアジェンデだからこそ魅力的な小説を書けるんだなーとの羨望と他の作品への期待も大きかったです。 無事だったのですが、娘が精密検査を受けた時に読んでいたので余計に心残る一作でした。
[PR]
by yesquire | 2008-01-14 21:48 | book
初めてのマルケスを3冊も読めたのは振り返って非常に幸せな1年だった気がします。 全集が終了する来年は同じような興奮が無いので落胆ですが..。 『迷宮の将軍』は中南米独立の英雄シモン・ボリーバルの伝記。 激動の時代と波乱万丈の人生を歩んだボリーバルですが、マルケスが語るのは死ぬまでのわずか数年間で、しかも自ら切り開いた国から追い立てられる悲しい道程です。
f0096206_21452811.jpg
宗主国との戦争、開放と敗北の跡が残るマグダレナ河沿岸の町を病に冒された将軍が過去を思い出しながら下る様子を、新聞記者だった作家らしい緻密な調査と取材で読者の前に展開させます。 南米の歴史や地理の知識があればもっと楽しめた伝記ですが、過激かつ陰湿に事実をさらけだすマルケス節にどんどん引き込まれてしまいます。 

裏切り、殺戮、病気とありえない伝説を持つボリーバルの人生はマルケスが題材に使うにはもってこいの人物だったのでしょう。 悲しくも荘厳に各地で迎えられる逃亡中の将軍やその家来達の表情までセピア色ですが想像できます。

できれば最近流行の新訳で出して欲しかったです。
[PR]
by yesquire | 2007-12-21 22:07 | book
「コレラ時代の愛」はチェス仲間を亡くした医師が同じ日にアクシデントで死んでしまい、寡婦となったフェルミーナ・ダーザの前に半世紀近くもこの時を待っていたフロレンティーノ・ダーサが現れプロポーズする事から物語が始まります。 
f0096206_12315337.jpg
ロマンチックなストーリーに聞こえますが、そこはガルシア=マルケスですから期待は裏切りません。 一人の女性を想い続ける青年の苦難よりも、周囲で起きる事件や昔のコロンビアでの生活などが得意のおとぎ話風に語られていきます。そうなんです、「語られていく」んです。 台詞はほとんど無く動作や景色や出来事が描写されるだけというマルケス節炸裂です。 確かに読んでいて疲れるあるいは眠くなることもあるでしょう。 しかし様々な場面でこれでもかと言うくらい読者を驚かせ感嘆させてくれる事に間違いはありません。 特に想われる方のフェルミーノ・ダーサの少女時代からの生活や青年医師との結婚生活は記憶に残るものでした。

マルケスが次々に刊行されるのも読書熱を維持させるのでしょうか。 先月からすごい勢いで本を読んでいます。 願わくば他の中南米作家の翻訳も読む時間が無い程出版されると幸せなんですが。
[PR]
by yesquire | 2006-12-06 12:28 | book
本屋で悩まずにレジに持っていく本が見つかった日は嫌なことがあってもすぐに忘れられます。 問題はそれがあまりない事ですが、ガブリエル・ガルシア=マルケスの久しぶりの新刊を見つけて2日間で読んでしまいました。 嬉しいことに新潮社からは「全小説」のシリーズで過去に刊行された分も順次発売されるそうです。 多作な作家ではないので、10作くらいですが書店で手に入らない本もあるのでファンには朗報です。
f0096206_2043324.jpg
『わが悲しき娼婦たちの思い出』は老年の主人公が90歳の誕生日に昔お世話になった娼館の女将に連絡を取ることから始まります。 記念すべきその日に処女を抱こうと思い立った彼のその日からの生活が描かれていますが、ガブリエル・ガルシア=マルケスはいつものように冒頭で読者の興味を見事に惹き、そのまま一気に読ませてしまいます。 主人公が老壮であるので自己移入は苦しいですが、枯れかけた男の哀愁や若かりし頃の武勇伝を思い出す場面などは同情させられます。

マルケスは登場する人物の肉体、特に下半身やセックスの描写が「あからさま」で「坦々と」していると思います。 まるでこんなの普通だよと言わんばかりの書き方が今回も随所に見られます。

夏目漱石の『こころ』に似てるなと個人的に思った個所がありました。 「教育を受けたちゃんとした人間のように見せかけているのは、なげやりで怠惰な人間であることに対する反動でしかなく、度量の小さい人間であることを隠すために寛大な振りをしているに過ぎず..」 自分が人生の最後にこんな風に自分を見返せるだろうかと心配になったセンテンスです。

以前刊行された岩波書店の『物語の作り方』で映画「シャイニング」を「輝き」と直訳してしまった木村栄一さんが翻訳だったので心配になりましたが、さすがは新潮社でした。

『わが悲しき娼婦たちの思い出』は僕より年上の男性に是非お薦めしたいです。 次にページを開く時は主人公と同じ年齢の時にしようと思いました。 評価は☆☆☆☆☆。
[PR]
by yesquire | 2006-10-06 20:42 | book
ペルーの作家マリオ・バルガス・リョサは僕の好きな小説家の一人です。日本ではフジモリ元大統領に選挙で負けた事で一気に知名度が上がりましたが、「緑の家」や「継母礼讃」など日本でも出版された作品が多いようです。

「フリアとシナリオライター」はラジオ局でアルバイトする作家志望の学生と魅力的な叔母、ラジオ局に現れた天才シナリオライターや友人との関係が綴られる名作です。若い主人公の駆け抜けるような恋愛が上手に表現され、一方で進むシナリオライターの破天荒な物語と相まってあっという間に読んでしまいました。ペルーの当時の生活も知ることができました。

リョサの魅力の一つはそのストーリーが事実なのかフィクションなのかぼんやりする所だと思います。幻想的な話が続くかと思えば現実に戻され、主人公の台詞や考えがリョサ自身の経験から生まれているのではないかと疑う個所も多いです。
f0096206_20502250.jpg
せっかくいい本なんですがら出版元の国書刊行会には装丁を何とかしてくれと言いたいですね。

最近はボルヘスやアレナスなどが日本で人気あるようですが、僕はリョサやガルシア・マルケス(ブティックではありません)の作品をもっと読みたいなーと思っています。

今日は会社の近くで新入社員をたくさん見かけました。青山周辺では歓迎会も多かったようです。
[PR]
by yesquire | 2006-04-03 21:30 | book