赤坂在住の夫婦と娘と赤ちゃんによる日記と地元情報。 食事、映画、読書にアート、何でもありのブログです。 第二子誕生しました!


by yesquire
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カテゴリ:book( 53 )

初めてのマルケスを3冊も読めたのは振り返って非常に幸せな1年だった気がします。 全集が終了する来年は同じような興奮が無いので落胆ですが..。 『迷宮の将軍』は中南米独立の英雄シモン・ボリーバルの伝記。 激動の時代と波乱万丈の人生を歩んだボリーバルですが、マルケスが語るのは死ぬまでのわずか数年間で、しかも自ら切り開いた国から追い立てられる悲しい道程です。
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宗主国との戦争、開放と敗北の跡が残るマグダレナ河沿岸の町を病に冒された将軍が過去を思い出しながら下る様子を、新聞記者だった作家らしい緻密な調査と取材で読者の前に展開させます。 南米の歴史や地理の知識があればもっと楽しめた伝記ですが、過激かつ陰湿に事実をさらけだすマルケス節にどんどん引き込まれてしまいます。 

裏切り、殺戮、病気とありえない伝説を持つボリーバルの人生はマルケスが題材に使うにはもってこいの人物だったのでしょう。 悲しくも荘厳に各地で迎えられる逃亡中の将軍やその家来達の表情までセピア色ですが想像できます。

できれば最近流行の新訳で出して欲しかったです。
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by yesquire | 2007-12-21 22:07 | book
先日惜しくも亡くなった最後の第2次大戦時代の文豪ノーマン・メイラー。 モハメド・アリが復帰戦でジョージ・フォアマンと対峙する「キンシャサの奇跡」のドキュメンタリー『ザ・ファイト』を読みました。
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作家が文中でも述べているようにメイラーは比喩の大御所、アリの練習風景やザイール情勢をこれでもかと様々な喩えで描きます。 アリの話し方は「トタン屋根がバタつくように話し続ける」、疎遠になった友人関係は「ボクシングの試合というものは、カスタネットをたたくように偏見を打ち破る」などと、最初から細かい視点で観察しながら得意の比喩で飛ばします。

珍しい「まえがき」で生島治郎が翻訳に大変苦労したと書いてますが、メイラーは詩人のように言葉をぶっきらぼうに並べてストーリーを語る作家だと思います。 おかげで作品後半の試合の描き方はスポーツライティングの観点から傑作と思われる文章になっていました。 ジョージ・プリンプトンと隣りで観戦したそうすが、メイラーが試合前にアリとジョギングしようと提案したのは彼を意識してのことかも知れません。 

いずれにしろ時代を代表する作家が逝かれたことは寂しいかぎりです。 日本語で全集作って欲しいなー。
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by yesquire | 2007-12-15 21:51 | book
ミシガンを舞台に不眠症の作家の周辺にいる友人、前妻、バイトの若い女、元哲学教授などの生活をインタビュー形式で描いた佳作が、毎回新鮮な作品で読者を軽くあしらうチャールズ・バクスターの「愛の饗宴」(The Feast Of Love)
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チャールズ・バクスターは変わり者で、ベストセラー常連ではないのに翻訳される機会が多く、日本の出版社も捨てたもんじゃないと思う代表的な作家です。 3年前に出版された本作は、主人公チャーリー・バクスターが散歩中に出会った友人に自分の過去について書くと良いと勧められ、まず本人と前妻から話を聞くことになるストーリー。

モールでカフェを経営する友人の私生活から始まり、破壊的なバイトの女の子とボーイフレンド、出て行った息子の亡霊に悩む老夫婦などの終わってみれば「愛」のストーリーがロマンチックとは程遠い書き方で綴られています。 全てがハッピーエンドとならない各個人の過去や現在、主張や対人関係が独白する言葉で描かれており、ノンフィクションとも読める本作の構成に感心しました。 題名は絵画が趣味の友人が描いた感動的な油絵から。
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by yesquire | 2007-12-02 16:13 | book
コーエン兄弟製作の映画が話題を呼んでいるCormac McCarthy(コーマック・マッカーシー)の『血と暴力の国』は彼らしい乾燥した詩的な空気に支配された小説。 ボーダーシリーズ並みの細かい武器や背景の描写は無いし、曖昧ですが最近の時代設定に新しい魅力を感じました。
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引退間近の保安官、麻薬がらみの殺戮現場から大金を奪ったヴェトナム帰還兵と彼を追う冷徹な殺人のプロが、血の匂いが漂う緊張感の強い南部の町で交差します。 現金を持って逃走する主人公は撃たれ、プロの殺し屋シュガーは殺人マシーンのように標的を消しますが、ベテラン保安官の昔を懐かしむ独白がクッションのように挿入され、ただのハードボイルドと違った味を出しています。

大自然や荒野を少ない言葉で表現する作者お得意の描写だけでなく、市街地での銃撃シーンは冷たい感覚が伝わり現場にいるような錯覚を覚えました。 渋い俳優を揃えた映画も非常に楽しみです。 だた、原題は"No Country for Old Men"なので日本語の題名が意味不明だし、扶桑ミステリーから単行本での出版なので本編後の解説のレベルの低さに驚きました。 
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by yesquire | 2007-11-23 10:14 | book
嫁さん待望のリンカーン・ライム最新作はシリーズ最強の敵が登場する『ウォッチメーカー』(The Cold Moon)。 殺人現場にアンティークの時計と詩を残す緻密かつ残忍な今回の犯人は、本来の目的を隠すために用意周到に様々な仕掛けを計画。 車椅子の元捜査官ライムとパートナーのサックス刑事がいつもより証拠の少ない現場の検証から犯人の意図をつきとめます。 

今回はサックスが警察内部の汚職を独自に調査していることからライムと息が合わず、代わりに尋問の専門家が目撃者や犯人から捜査に重要な事実を引き出します。
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というわけで科学捜査で事件解決という構図に作者が飽きてきたのか、CSIが人気だからか、証拠品からあっと言わせる推理や犯人先回りといういつものツイストが今回はあまり目立ちません。 むしろ印象に残ったのは細かい動きや反応で嘘や隠し事を暴く「キネクシス」専門のダンス捜査官の方でした。

ま、それでも嫁さんは育児の空いた時間に2日くらいで、旦那の私は出張の合間で4日の計1週間で2人で読んでしまいました。 事件の終わりは納得いかない本作の評価は☆☆★★★。 
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by yesquire | 2007-11-13 22:48 | book

『オッペンハイマー』

「オッペンハイマー」は「原爆の父」ロバート・オッペンハイマーの伝記。 愛国心から原爆を作った彼は意外にも日本に落とされた数年後に反米活動の疑いをかけられ地位を失ってしまう。 この本は作者達の25年に及ぶリサーチによって希代の科学者の複雑なポートレイトを描ています。 科学界のカリスマだった彼は、詩を愛し、哲学を語り、授業でもパーティーでも聴衆や政治家を虜にしてしまいます。 ロスアラモスに英知を集めて一つの目的のために統率するのですが、空前絶後な殺人兵器を製作している意志は感じられません。 これはその後の政治的なナイーブさによって孤立する天才の性格でもあります。
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マンハッタン計画や原爆の被害について語られることは多いでしょうが、原爆の実験成功を頂点としたオッペンハイマー博士の特に後世を学問的成果や功績を除いて語る作品は珍しいのではないでしょうか。 FBIもが調査をした共産主義者との接触の事実を訴求され輝きを失っていく過程はショックでもありました。 ピューリッツァー賞受賞した久しぶりの長編ドキュメンタリーは時間もかかりましたが、読後に色々考えさせられる名作。

オッペンハイマーはノーベル賞を受賞した「ビューティフルマインド」のジェフ・ナッシュを迎え入れるなど科学界への貢献も多大ですが、文学など他の分野での造詣も深く、知識人との交流も多かったことに驚かされました。 原題は"American Prometheus"、プロメテウスは人間に火を与えてゼウスの怒りをかい、肝臓をハゲタカに啄ばまれ続ける拷問を受けた神です。 
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by yesquire | 2007-10-27 18:55 | book
古典の新訳シリーズで「武器よさらば」を恥ずかしながら初めて読みました。 ヘミングウェイの殺ぎ落とされた文章の表現力に改めて感心、少ない単語で繋がれているのに映画のワンシーンがページから浮かんでくるようでした。
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作者の体験が大きくベースになっている物語は舞台が第一次大戦のイタリア戦地、アメリカから来た兵士とイギリス人看護婦の出会いと別れが淡々と描写されています。 兵士の会話や戦場の緊迫感を最小限の言葉で伝えられるのはヘミングウェイが現地にいたからに違いありません。 

戦争の経験はありませんが、立ち会った自分は作品後半の出産のパートには深く感じるものがありました。 
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by yesquire | 2007-10-13 07:37 | book
湾岸戦争や9/11が起きる前のヴェトナム戦争に関する論争が盛んだった頃に読みたかったのがTim O'Brien(ティム・オブライエン)の「僕が戦争で死んだら
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前からヴェトナム主題の彼の小説は正直あまり読書欲が湧きませんでした。 やっと手にとるようになってその時代に触れていればと後悔、ポスト9/11の現在の自分にはリアリティーというか刺激が薄れてしまった印象です。 CNNが湾岸戦争を現地からレポートし、貿易センタービルが崩落するのをリアルタイムで観てしまえば、死と隣り合わせのヴェトナムでの進軍や戦友の描写は微妙に心に響きませんでした。 

それでも最後まで読んだのは詩的でアカデミックなオブライエンの文章と戦場で経験したものにしか描けない鋭い文章だったからでしょうか。
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by yesquire | 2007-08-29 22:56 | book

cow books  表参道

表参道のDragonfly CAFEにcow booksのコーナーが常設されたので行ってきました。 cow booksは絶版になった古本専門の本屋で、アート系も多いのですがしっかりしたフィクションも置いてあるので個人的には興味深々の本屋さんです。
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たぶん本の流通業者が多趣味でないんでその日に買ったゲイ・タリーズなんかはパッタリ普通の本屋では見なくなりました。 日本の本屋さんは偏りが大きすぎです。 「Honor Thy Father(汝の父を敬え)」はタリーズの名作で一度読んでみたかった作品の一つ。 翻訳の常盤新平さんはお会いした時に大変気さくで爽やかな方だった印象があります。 時間かかってもいいので出版社には意義のある大作を訳して世に出して欲しいです。

今日は表参道散歩中にいろんな知り合いと話す機会が多く、嫁さんとも「こうゆう日もあるんだね」と語っておりました。



 
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by yesquire | 2007-06-09 22:47 | book
主人公が結婚式に呼ぼうと思った疎遠な父親が死んでおり、しかも神だった!という始まりの「アナンシの血脈」はそのさわりだけで気に入ってレジに持って行ってました。
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冴えない青年チャーリーはフロリダ出身でイギリス在住、フィアンセの母親が堅物で結婚には当然反対していること、実は弟がいて神の遺伝子全てはそちらに流れているなど物語の広がりにドキドキするような設定となってます。 チャーリーの会社の上司、実家の近所の小母達や知り合った女デカなど魅力的で怪しい登場人物も数多く登場、そして気付いた頃には何故か皆同じ場所にいたりします。 奇想天外な物語とユーモアが満載のこの作品は久しぶりに初めて読む作家なのにあっとゆう間でした。

嫁さんにも3日くらいで読んでました。 虎と蜘蛛の対決がベースの読みやすい物語、評価は☆☆☆★★。
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by yesquire | 2007-02-28 22:38 | book