赤坂在住の夫婦と娘と赤ちゃんによる日記と地元情報。 食事、映画、読書にアート、何でもありのブログです。 第二子誕生しました!


by yesquire
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カテゴリ:book( 53 )

キネクシスを駆使する西海岸の捜査官キャサリン・ダンス物の2作目がジェフリー・ディーヴァーの『ロードサイド・クロス』。 ネットのイジメが原因でティーンエイジャーが誘拐され風光明媚なモンテレーの道沿いにアメリカでたまに見かける墓標が犯罪予告として置かれていることが分かりストーリーが展開し始めます。
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ブログの記事に対する作家の批評に加えてネット時代の報道と犯罪が描かれていますが、前半はサスペンスというより時代遅れの読者に現代のインターネット事情を解説するような構成になっており退屈します。 巨匠得意のツイストも最後まで起らず、ページ数から逮捕された犯人の他に真犯人の存在が分かるので面白味に欠けるのも事実。 ただし終盤まで一気に読ませる完成度の高さはさすがで、今回はロマンスもあったりで緊張感より充実感を感じるシリーズでした。
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by yesquire | 2011-01-06 22:41 | book
ガルシア=マルケスの自伝『生きて、語り伝える』は幻想的かつ現実的な彼の小説にも似て大変興味をそそる半生記。 日本の文学大家と同じように進学しても勉強せず将来のベストセラー作家を夢みて中途半端な生活を送り、様々な経験をして小説家としての肉付きを増やしていく過程は(当時のコロンビア情勢が不勉強でも)面白く、特に母親を中心としたファミリーの奇人や伝説は名作の背景が見え隠れして楽しいノンフィクションとなっています。
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新聞記者としてヨーロッパへ渡る直前で今回は終了しますが、その経験を生かしたドキュメンタリー風の半生の語りは見事としか言いようがなく、自伝をこれほど読み応えある作品に仕上げたマルケスの技量には大きく感心。 執筆ばかりと思えばちゃっかり女性も(危機一髪の時もありますが)モノにし、意外ですが中南米の音楽に造詣の深い面を見せたり、人生の中で過ぎ去って行った人の名前や表情などを詳細に記憶している部分には驚かされます。 政変が起きたコロンビアでの「この世でいちばんいい職業」で「高く評価しているルポルタージュ」のお手本のような緊張感のあるパートや、父親の期待を裏切りその事実を現実的かつ芯の強い母親と分かち合う両親との関係や大勢の兄妹を振り返るノスタルジックな文章などマルケスの様々な一面が凝縮され続編が大変待ち遠しい一冊でした。
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by yesquire | 2010-03-11 22:46 | book
New York Times Book Reviewが選んだ過去25年の最高のフィクションにボーダー三部作と共にノミネートされていたのがCormac McCarthy(コーマック・マッカーシー)の『ブラッド・メリディアン』。 荒野、殺戮、掟、酒場、自然、拳銃、メキシコと頭皮狩りを会話のない研ぎ澄まされた言葉で語った作品は、『ザ・ロード』で究極の形となった作者独特の期待や倫理観を突き放す文章のいわば原石でかえって印象を深くした感があります。
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主人公の少年は判事と言われる大男と出会い、領土拡大時代の西部でインディアン討伐隊に加わり、殺戮、祝福と彷徨を経験。 当然死の直前まで追い込まれますが、途中でその存在も薄れる程の頭皮狩りの行程が描かれ、西部劇がソフトに見えてしまう荒々しさと無残さを幾度となく少ない言葉で語る章があります。

他作品で映画がヒットしたのでやっと出版されたようですが、この小説を映像にするのはちょっと想像できません。 ちなみに過去25年のベストノベルはToni Morrison(トニ・モリソン)の『ビラブド』で、個人的に最高傑作と評価しているドン・デリーロの『ホワイト・ノイズ』が2番手。 でその下に本作は並べられていました。
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by yesquire | 2010-02-09 22:01 | book
今回は比較的シンプルな構成でおおがかりなツイストもなく終わったリンカーン・ライム物最新作が『ソウル・コレクター』。 妊娠中に早々と読んでしまった嫁さんは専門分野の話が多すぎるとの感想でしたが、詳細な他人の情報を最大限に利用して殺人犯に仕立て上げる知能犯が本作の敵。
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データ分析専門の会社が保有する個人情報はフィクションとは言え恐ろしい範囲に及び、ページが進むと自分の周囲が気になります。 ライムの従兄弟との過去、アメリアとの関係、それからデータ収集と管理に関する専門用語などわりとしっかりした本筋に絡むサイドストーリーが目立つのが今回の作品。 気が付けば大いにありうる個人情報の悪用が身近すぎて緊張感を沸騰させ、登場人物達の個性も目立たなくなっていたシリーズの最新作は科学捜査がポピュラーになりすぎて今後に不安を残す印象を残しました。 
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by yesquire | 2010-01-09 23:46 | book
もう読めないかと思っていた名作『カヴァリエ&クレイの驚くべき冒険』の作家マイケル・シェイボンの最新作はハードボイルドな刑事物で日本では文庫版推理小説のカテゴリーとなってしまった『ユダヤ警官同盟』
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アラスカの局地にあるユダヤ人居住地で起きた殺人事件を追うユダヤっぽくない刑事が主人公。合衆国に編入されてしまう特別区、アラブ諸国によって崩壊したイスラエル、独立した満州、暗殺されないケネディ大統領、厳格かつ閉鎖的な辺境のユダヤ教社会など設定はかなり荒っぽく特徴がありますが、殺人事件があらぬ方向へ展開し主人公も追い込まれる推理小説としても読みごたえのある作品。

コーエン兄弟が映画化するそうなので想像しやすい面もありますが、ダークで個性豊かな人物が多数登場するので作家は読者を飽きさないフィクション。 救世主や宗教家の世界に加え主人公の負け犬刑事とインディアンの血を継ぐ大柄な相棒、上司として戻ってきた元妻など変なキャラクターにも事欠きません。 全編を通してチェスがキーとなる優良な推理小説の映画版も楽しみです。
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by yesquire | 2009-12-25 16:30 | book
日本語訳がお始末なために読んでいて少なからず不愉快になるドキュメンタリーとなってしまったマイケル・ルイスのスポーツ物3作目が『ブラインド・サイド』。 映画化が決定で急に出版したからなのか、緊張感のあるNFLのシーンも無駄なポンドにキログラムのルビや、表紙裏の素人には参考にならないポジション表などがかえって混乱をきたす導入部分となり感情移入できません。
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物語はルイジアナの貧困と混乱の中で育ったマイケル・オアーが偶然白人の裕福な家庭に保護され家族となり、その体格と運動神経によって超高校級のアメフト選手になって行くもの。  苦労して現在の資産と地位を築いた父親と厳格でプライドの高い母親、才能を見抜いたコーチや根気よく勉強を教える家庭教師などに支えられ、無事アメリカ流のサクセスストーリーを成就させる主人公のドキュメンタリーには感動します。 

入念に語られているように早くから確立されたスカウト網のおかげで実力を発揮したマイケルに対し大学のコーチ達が壮絶な獲得合戦を行い、最終的には父親と同じミシシッピー大学に入学、本作には間に合いませんが様々な記録を打ち立てドラフトでNFLのレイヴェンズに入団します。 作者の妻がディナーの席で「10分で笑い、20分で泣き、30分で食事を忘れた」と述べているように映画として素材も豊富なドキュメンタリーですが、とにかく正直すぎて余計なカタカナ表記と知識をひけらかしたがる翻訳ブラインドな翻訳家のせいで日本語訳は大失敗で、10分もスラスラ読むことはできません。 原文かWikipediaを読んだほうがより現実的で真実味があった本作の映画に期待です。

wiki→ http://en.wikipedia.org/wiki/Michael_Oher
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by yesquire | 2009-12-14 23:33 | book
ギリシャ、スコットランドにマンハッタンと島が舞台の長編小説『六月の組曲』は原題(「Three Junes」)の通り3つの異なる年の6月を異なる主人公が語るフィクション。 犬の調教で名をはせた妻に先立たれた新聞社経営のスコティッシュが忘れるためにギリシャを旅する第一部は、アメリカ人の若い女性画家との出会いで期待が膨らむちょうどその時にあっさり終了。 部の後半に距離も心も離れてしまった長男の話が出てきますが、その彼が第二部の主人公となりエイズや父親の死に直面するどちらかというと頑固でとっつきにくいゲイのNYでの生活と葬式で再開する家族の話にシフトします。 不妊症の弟家族の問題、死に近づくシニカルな音楽評論家のパートナー、衝動的に出会い魅かれていくジゴロのような男など周囲の状況は好転するでもなく、むしろ彼が自分の世界を守ることで無機質な存在となっている状況が淡々と描かれています。
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気になる第三部の主人公はなんと写真家のジゴロに惹きつけられた女性画家。 愛してもない夫を事故で失い新たな恋人の子を身ごもる彼女は第1部で老人がギリシャで出会った彼女のその後であり、アメリカでのパーティで長男と接点を持つところでもう一度物語は盛り上がりを見せます。 「あなたの父親知っているわ」という展開には期待通りなりませんが、恋人に妊娠を打ち明けていない女性と堅物のゲイの書店経営者が車の中で語る最後のシーンには感動します。

死と生、静と動と書くと単純すぎる様々な事象が語られるジュリア・グラスの秀作は、エイズ患者の赤裸々な状態が詳細なのでもうちょっと古いのかと思えば2002年の作品でした。 せっかくメジャーな現代小説を取り上げたのだから、DHCも化粧品ではなく社名の通り翻訳にも継続的に力を入れてほしいです。
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by yesquire | 2009-11-06 21:39 | book
マリリン・モンローの生涯を描いたジョイス・キャロル・オーツの長編フィクションが『ブロンド』。巻頭で著者が「フィクションという形を借りて「人生」を徹底的に蒸留したもの」と述べているようにセックスシンボルの一生を詳細に描写しているが、「実在のマリリン・モンローの残した詩から2行だけ引用した」りで「彼女の伝記的な事実を本書に求めるのは筋違い」な完全なフィクション。
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ハリウッドの落伍者である母親との貧困な生活と長い孤児院時代から始まるノーマ・ジーンの自伝は暗く不幸で、我々が知るマリリン・モンローの華やかなハリウッドのイメージと対照的です。 詩を愛す献身的で純粋な少女は里親や教師に気に入られようとしますが、目立つ彼女の外見が知らず知らずのうちに大人を惹き寄せ、セクシャルな女としての一面を早くも発揮。 田舎町での早い結婚と献身的かつ愛情に飢えた彼女の生活は大戦のピンナップガールに登用されることで一気に展開することに。

セクシーな雑誌のモデルからハリウッド映画のデビューはトントン拍子で進み、エージェントとの関係や業界の中で揉まれる絶世の大人の美貌を持つ少女は、辱められ、傷つきながらも成功への道を静かに歩んでゆきます。 美人でグラマラスなだけで中身のないブロンドの代表みたいなイメージに対し、現代アメリカ文学界の女王は演技を真剣に学ぶ勉強熱心で向上心のあるアイコンの姿を悲壮に描写。 セレブ達との乱れた関係、大リーガーや劇作家との結婚生活の根底には捨てられた父親への求愛とコンプレックスがあり、付きまとう女性にしか理解できない生理現象と刹那的な精神病を持つスターの人生は最後まで過酷なまま終わります。

ジョイス・キャロル・オーツは女性を主人公にした小説でそのパワーを発揮する気がします。 多作な彼女の作品が今回のような上手い翻訳で今後も出版されるといいなと思いました。
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by yesquire | 2009-10-24 17:28 | book
アップダイクによるアフリカの仮想の国を舞台にしたドラマが『クーデタ』
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前王をクーデタで葬り去った大佐が君臨し統治した国クシュと留学先のアメリカでの生活や去就を自ら語るフィクションは、南米を舞台にしたガルシア=マルケス作品のアップダイクヴァージョン。 1978年に発表された本作では主人公エレルーや他の登場人物にも教養があり、舞台がアフリカでも巨匠の本領が発揮される場面は多くあります。

翻訳の池澤夏樹は大統領の羨望である先進国の商品名をそのまま(Coca Cola、Kelloggなど)英字で表記しており、コーランの引用と供に知られざる国のリアリティを増幅させます。 不毛の大地にもロシアの基地があり、アメリカは救援物資を押し付け、統治者はベンツを乗り回して国をまわる。 資本主義の洗礼を受けたがそれを否定する大統領は敬愛する王を処刑し、その亡霊に怯えながら身分を隠して自らの土地をさまよい、数ある愛人宅を訪れ、最後に資本主義の象徴である最新の石油精製所においてその身を貶めることに。 ラテンアメリカの作家と違い絶望や暴力ではなく、権力や独裁と物質主義の国での生活が描かれるのはある意味現代のおとぎ話とも言え、アップダイク流のエマージングカントリー物は十分読み応えのある小説でした。
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by yesquire | 2009-10-16 22:50 | book
21世紀に起きた中国との戦争後のボストンが舞台の近未来小説がアップダイクの『終焉』。 合衆国政府は無能、通貨ドルは通用せず、人々は経済的繁栄を夢見てメキシコへ脱出する以外はあまり現代と変化のない世界で、主人公の元投資銀行家(97年のこの時点では裕福な設定)の日々の生活が描かれています。
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主人公の独白で語られる物語には野生の鹿、売春婦、80年代と勘違いしているようなエネルギッシュな妻、まともな子供達と用心棒くらいしか登場しません。 アップダイクはそれでも戦後の緊張を投げてきますますが、四季の移り変わりを細かく庭の植物で描写したり、60歳代の主人公が興味を持つ分子の世界を深く語らせ読者を逃がしてくれます。 また、ガルシア‐マルケスと似ているけどアメリカらしい老いた体と性について淡々と展開する場面もあり、出版社は「SF」とアホらしい言葉を使っていますが非常に現実的な内容となっています。 

そもそも孫に会った帰りに勤めていた会社に立ち寄り、鹿を処分するために業者を雇ったり、雪の朝のフェデックスのタイヤの跡や売春婦とのやりとりなど「SF(サイエンスフィクション)」と言うよりは「SF(ストレート・フィクション)」と言った方が合うようです。 病に冒された身体でお気に入りの売春婦を哀れに探す老人、庭の草木で四季を感じながら義理の娘とのセクシャルな関係を想像する父親。 廃頽的な文章も、戦後というよりはアップダイクらしい老いと性のとらえ方を上手く表現していると思われます。 最後に撃たれた鹿が運ばれるシーンは読んでいてゾクゾクしてしまいました。
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by yesquire | 2009-07-12 14:31 | book