『ザ・ロード』 コーマック・マッカーシー
2008年 07月 16日
アンセム・キーファーの灰色の大きなインスタレーションが頭に浮かぶピュリッツァー賞受賞作はコーマック・マッカーシーの短編とも呼べる無駄を極力そぎ落とした、ある意味ヘミングウェイな近未来フィクション。 『ザ・ロード』はページが進むと同時に家族を思う気持ちも広がる作品でした。 焼け野原となった世紀末の地球が舞台で、大気は汚れ太陽は見えず雪が舞う道を名もない親子が殺戮と強奪が続く中進んで行きます。 生き物は人を獲物にする悪人しかおらず、食事もままならない環境で父親はひたすら息子を守ることを第一に歩みます。 もしもの時に餌食にならないよう自殺する方法を教えている事がわかる場面ではこちらの胸が痛くなります。
前作でも研ぎ澄まされた刃物のような文章で悪と善を描いた作者が更に硬度を増した短い言葉で語る作品は、想像力が膨らむ分だけ希望も将来もない状況が心に無情に鋭利な角度で刺さる気がします。 食べ物を探した家の地下にいた全裸で足を切断された男と助けを求める声、焼かれて食べられた赤ん坊などカニバリズムがさらに平和な現代に生きる我々に鈍器で殴られるような感覚を与えますが、偶然見つけたシェルターで久しぶりに風呂に入りコーヒーを沸かす場面が際立って幸福に見えたりもします。
病に冒され死を待つ父と世界が崩壊した後に生まれた子の間で極端に短い会話で表現される親子の愛情、数ページか数段落で収まってしまう事件や出来事、想像を超えた末期の世界をマッカーシー色で極めた小説は現代アメリカ文学の最優良作の一つだと思いました。
前作でも研ぎ澄まされた刃物のような文章で悪と善を描いた作者が更に硬度を増した短い言葉で語る作品は、想像力が膨らむ分だけ希望も将来もない状況が心に無情に鋭利な角度で刺さる気がします。 食べ物を探した家の地下にいた全裸で足を切断された男と助けを求める声、焼かれて食べられた赤ん坊などカニバリズムがさらに平和な現代に生きる我々に鈍器で殴られるような感覚を与えますが、偶然見つけたシェルターで久しぶりに風呂に入りコーヒーを沸かす場面が際立って幸福に見えたりもします。
病に冒され死を待つ父と世界が崩壊した後に生まれた子の間で極端に短い会話で表現される親子の愛情、数ページか数段落で収まってしまう事件や出来事、想像を超えた末期の世界をマッカーシー色で極めた小説は現代アメリカ文学の最優良作の一つだと思いました。
by yesquire
| 2008-07-16 22:18
| book