赤坂在住の夫婦と娘と赤ちゃんによる日記と地元情報。 食事、映画、読書にアート、何でもありのブログです。 第二子誕生しました!


by yesquire
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

『楽園への道』 マリオ・バルガス=リョサ

最近読んだ南米の作家達の秀作はすべてノンフィクションばかりです。 『楽園への道』は理想を追及し自らを犠牲にして労働者運動を行うフローラと、その孫であり芸術を異国に求めてさまようゴーギャンの物語。
f0096206_154524.jpg
労働者を団結させようと孤軍奮闘している祖母の姿は女性への偏見や労働組織に対する無知と保守的な信仰が渦巻く1850年代のフランスにおいて全く絶望的で無謀に描かれます。 同じように安定と地位と家族を捨て南の島に移住した孫の乱れた生活と性病に侵された身体での芸術活動も自暴自棄かつ絶望的に語られます。祖母は若気の至りで嫁いだ後悔と夫からの逃亡、対比される孫は親友ゴッホへの裏切りと自殺に対する責任に行く先で付きまとわられ苦悩します。

題材に事欠かないからか特異な地理と歴史が理由か分かりませんが、南米の作家にはちょっと変った家族や一族など「族」の歴史を書く非凡な才能が感じられます。 フランスに立ち向かう祖母とフランスを捨てる孫の悲運を語った作品は特にリョサらしい詳細な調査に基づいた現実的な夢物語に仕上がっていました。 

リョサは小説を書くに前に緻密なリサーチを行い特にペルーの歴史や社会を目にするうちに自ら大統領となって現状を変えようと思い立ったことがあります。 キューバ革命に感銘し実際に住んでいましたがプラハの春を契機に共産主義と決別します。 裏切りや失望感に支配された作品は居並ぶ南米の大御所でもリョサの得意分野なのだと感じました。
[PR]
by yesquire | 2008-02-10 16:03 | book