赤坂在住の夫婦と娘と赤ちゃんによる日記と地元情報。 食事、映画、読書にアート、何でもありのブログです。 第二子誕生しました!


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『わが悲しき娼婦たちの思い出』 ガブリエル・ガルシア=マルケス

本屋で悩まずにレジに持っていく本が見つかった日は嫌なことがあってもすぐに忘れられます。 問題はそれがあまりない事ですが、ガブリエル・ガルシア=マルケスの久しぶりの新刊を見つけて2日間で読んでしまいました。 嬉しいことに新潮社からは「全小説」のシリーズで過去に刊行された分も順次発売されるそうです。 多作な作家ではないので、10作くらいですが書店で手に入らない本もあるのでファンには朗報です。
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『わが悲しき娼婦たちの思い出』は老年の主人公が90歳の誕生日に昔お世話になった娼館の女将に連絡を取ることから始まります。 記念すべきその日に処女を抱こうと思い立った彼のその日からの生活が描かれていますが、ガブリエル・ガルシア=マルケスはいつものように冒頭で読者の興味を見事に惹き、そのまま一気に読ませてしまいます。 主人公が老壮であるので自己移入は苦しいですが、枯れかけた男の哀愁や若かりし頃の武勇伝を思い出す場面などは同情させられます。

マルケスは登場する人物の肉体、特に下半身やセックスの描写が「あからさま」で「坦々と」していると思います。 まるでこんなの普通だよと言わんばかりの書き方が今回も随所に見られます。

夏目漱石の『こころ』に似てるなと個人的に思った個所がありました。 「教育を受けたちゃんとした人間のように見せかけているのは、なげやりで怠惰な人間であることに対する反動でしかなく、度量の小さい人間であることを隠すために寛大な振りをしているに過ぎず..」 自分が人生の最後にこんな風に自分を見返せるだろうかと心配になったセンテンスです。

以前刊行された岩波書店の『物語の作り方』で映画「シャイニング」を「輝き」と直訳してしまった木村栄一さんが翻訳だったので心配になりましたが、さすがは新潮社でした。

『わが悲しき娼婦たちの思い出』は僕より年上の男性に是非お薦めしたいです。 次にページを開く時は主人公と同じ年齢の時にしようと思いました。 評価は☆☆☆☆☆。
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by yesquire | 2006-10-06 20:42 | book