赤坂在住の夫婦と娘と赤ちゃんによる日記と地元情報。 食事、映画、読書にアート、何でもありのブログです。 第二子誕生しました!


by yesquire
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『六月の組曲』 ジュリア・グラス

ギリシャ、スコットランドにマンハッタンと島が舞台の長編小説『六月の組曲』は原題(「Three Junes」)の通り3つの異なる年の6月を異なる主人公が語るフィクション。 犬の調教で名をはせた妻に先立たれた新聞社経営のスコティッシュが忘れるためにギリシャを旅する第一部は、アメリカ人の若い女性画家との出会いで期待が膨らむちょうどその時にあっさり終了。 部の後半に距離も心も離れてしまった長男の話が出てきますが、その彼が第二部の主人公となりエイズや父親の死に直面するどちらかというと頑固でとっつきにくいゲイのNYでの生活と葬式で再開する家族の話にシフトします。 不妊症の弟家族の問題、死に近づくシニカルな音楽評論家のパートナー、衝動的に出会い魅かれていくジゴロのような男など周囲の状況は好転するでもなく、むしろ彼が自分の世界を守ることで無機質な存在となっている状況が淡々と描かれています。
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気になる第三部の主人公はなんと写真家のジゴロに惹きつけられた女性画家。 愛してもない夫を事故で失い新たな恋人の子を身ごもる彼女は第1部で老人がギリシャで出会った彼女のその後であり、アメリカでのパーティで長男と接点を持つところでもう一度物語は盛り上がりを見せます。 「あなたの父親知っているわ」という展開には期待通りなりませんが、恋人に妊娠を打ち明けていない女性と堅物のゲイの書店経営者が車の中で語る最後のシーンには感動します。

死と生、静と動と書くと単純すぎる様々な事象が語られるジュリア・グラスの秀作は、エイズ患者の赤裸々な状態が詳細なのでもうちょっと古いのかと思えば2002年の作品でした。 せっかくメジャーな現代小説を取り上げたのだから、DHCも化粧品ではなく社名の通り翻訳にも継続的に力を入れてほしいです。
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by yesquire | 2009-11-06 21:39 | book