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赤坂在住の夫婦と娘と赤ちゃんによる日記と地元情報。 食事、映画、読書にアート、何でもありのブログです。 第二子誕生しました!


by yesquire
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『クーデタ』 ジョン・アップダイク

アップダイクによるアフリカの仮想の国を舞台にしたドラマが『クーデタ』
『クーデタ』 ジョン・アップダイク_f0096206_2244112.jpg
前王をクーデタで葬り去った大佐が君臨し統治した国クシュと留学先のアメリカでの生活や去就を自ら語るフィクションは、南米を舞台にしたガルシア=マルケス作品のアップダイクヴァージョン。 1978年に発表された本作では主人公エレルーや他の登場人物にも教養があり、舞台がアフリカでも巨匠の本領が発揮される場面は多くあります。

翻訳の池澤夏樹は大統領の羨望である先進国の商品名をそのまま(Coca Cola、Kelloggなど)英字で表記しており、コーランの引用と供に知られざる国のリアリティを増幅させます。 不毛の大地にもロシアの基地があり、アメリカは救援物資を押し付け、統治者はベンツを乗り回して国をまわる。 資本主義の洗礼を受けたがそれを否定する大統領は敬愛する王を処刑し、その亡霊に怯えながら身分を隠して自らの土地をさまよい、数ある愛人宅を訪れ、最後に資本主義の象徴である最新の石油精製所においてその身を貶めることに。 ラテンアメリカの作家と違い絶望や暴力ではなく、権力や独裁と物質主義の国での生活が描かれるのはある意味現代のおとぎ話とも言え、アップダイク流のエマージングカントリー物は十分読み応えのある小説でした。
by yesquire | 2009-10-16 22:50 | book