『終焉』 ジョン・アップダイク
2009年 07月 12日
21世紀に起きた中国との戦争後のボストンが舞台の近未来小説がアップダイクの『終焉』。 合衆国政府は無能、通貨ドルは通用せず、人々は経済的繁栄を夢見てメキシコへ脱出する以外はあまり現代と変化のない世界で、主人公の元投資銀行家(97年のこの時点では裕福な設定)の日々の生活が描かれています。 主人公の独白で語られる物語には野生の鹿、売春婦、80年代と勘違いしているようなエネルギッシュな妻、まともな子供達と用心棒くらいしか登場しません。 アップダイクはそれでも戦後の緊張を投げてきますますが、四季の移り変わりを細かく庭の植物で描写したり、60歳代の主人公が興味を持つ分子の世界を深く語らせ読者を逃がしてくれます。 また、ガルシア‐マルケスと似ているけどアメリカらしい老いた体と性について淡々と展開する場面もあり、出版社は「SF」とアホらしい言葉を使っていますが非常に現実的な内容となっています。
そもそも孫に会った帰りに勤めていた会社に立ち寄り、鹿を処分するために業者を雇ったり、雪の朝のフェデックスのタイヤの跡や売春婦とのやりとりなど「SF(サイエンスフィクション)」と言うよりは「SF(ストレート・フィクション)」と言った方が合うようです。 病に冒された身体でお気に入りの売春婦を哀れに探す老人、庭の草木で四季を感じながら義理の娘とのセクシャルな関係を想像する父親。 廃頽的な文章も、戦後というよりはアップダイクらしい老いと性のとらえ方を上手く表現していると思われます。 最後に撃たれた鹿が運ばれるシーンは読んでいてゾクゾクしてしまいました。
そもそも孫に会った帰りに勤めていた会社に立ち寄り、鹿を処分するために業者を雇ったり、雪の朝のフェデックスのタイヤの跡や売春婦とのやりとりなど「SF(サイエンスフィクション)」と言うよりは「SF(ストレート・フィクション)」と言った方が合うようです。 病に冒された身体でお気に入りの売春婦を哀れに探す老人、庭の草木で四季を感じながら義理の娘とのセクシャルな関係を想像する父親。 廃頽的な文章も、戦後というよりはアップダイクらしい老いと性のとらえ方を上手く表現していると思われます。 最後に撃たれた鹿が運ばれるシーンは読んでいてゾクゾクしてしまいました。
by yesquire
| 2009-07-12 14:31
| book