赤坂在住の夫婦と娘と赤ちゃんによる日記と地元情報。 食事、映画、読書にアート、何でもありのブログです。 第二子誕生しました!


by yesquire
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『墜ちてゆく男』 ドン・デリーロ

ドン・デリーロの『墜ちてゆく男』では40前の弁護士が9月11日貿易センタービルから「頭から爪先まで灰色の煤みたい」で「顔も服も血まみれ」になりながら前妻の玄関に現れます。持っていた他人のブリーフケースは同じくビルにいた黒人女性のもので、非常階段での経験を分かち合う深い関係に進展。 老齢で自殺した父親を持つ前妻は朗読によるセラピーで老人達の9/11に触れ、母親とその恋人と宗教感を論じます。 友人を亡くした主人公は引きこもり、「他人とのあいだの航空マイル」のような空間的基準を身につけるように。 やがてよりを戻した二人の関係にも結末が訪れます。
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爆撃実行犯がビル突撃しそこから惨憺たるビルの現場に移り変わる場面はショッキングで見事な文章で語られ、小説全体にはデリーロ得意の乾いた雰囲気が9/11後の断絶された関係、緊張感と焦燥感を漂わせます。 ノンフィクションに近い小説として発表されてもおかしくなかったデリーロによる9/11は、現場の状況描写が最小限に抑えられ、美術商、鉛筆、ポーカーなどの小道具によって事件後の登場人物の生活が表現されます。

短い文章で描いたセンタービル内部の修羅場も壮絶でしたが、主人公の子供が他の子と内緒で部屋の窓から探していたビル・ロートンという人物が実はビン・ラディンだったという下りに戦慄を感じました。

現代のアメリカ人作家で一番好きなデリーロの9/11題材の作品はまた時間のある時に再読したい1冊です。
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by yesquire | 2009-04-29 22:30 | book